左見右見 / 別役実
「どこかにじっと座っていて、パソコンに向き合っていれば、流動する世界のまっただ中に入りこんでいると思いこんでしまいがちなのであるが、これは錯覚以外の何ものでもない。我々は世界に参加していると思っているが、世界の方は我々が参加しているとは思っていないからである。」
四字熟語によって「情報化社会」の現代を左見右見するエッセイ集。
「「情報化社会」と言われる時代に入り、言葉が単なる「意味のある記号」にされてしまって逆に、言葉の持つ、意味以外の要素が見直され、「多少普遍性は欠くにしても」という条件つきで、方言が見直されはじめた、(・・・)共通語(いわゆる標準語のこと)は意味に過ぎないが、方言は言葉である。それには意味である以外に、「ひびき」があり「匂い」があり「手触り」があり、それらを総合して体感するための実体がある。(・・・)この同じ意味で、四字熟語も言葉である。意味の記号ではない。方言と同様、我々はそれを実体のある言葉として、体感できる。」
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