「まるっきり前作の焼き直しじゃないか。シチュエーションが似ていて、解決まで同工異曲とは、どういう神経をしているんだこの作家は。それでもプロか!」
そんな作品がこの本です。(笑)
それでもいいのだ、と暗に言っているんですかね。
趣味でやってる低能力な超能力者、論理に破綻がなければ合ってても間違っててもお構いなしなアンパン男、なぜか美女に相談を持ちかけられる牛丼屋店員、そして超能力を頼って相談に来る美女。
この4人が繰り広げるやり取りが毎回お決まりのパターンなのだが、読んでいて面白くて心地いい。
あと、短編のタイトルが内容とまったく関係ないのも面白い。(もちろん本のタイトルも)
「哀れな猫の大量虐殺」がなかなかいい出来だった。
連作短編集。
三人の男が現実とも非現実ともつかない静かで暗い世界に生きている。
それぞれ、何人かの他人と接点がありつつも情景がきれぎれに交錯しており、最終的に孤独感が漂うもののそのなかで見つかったような気がする幸福感。
主人公が死んだところから始まり、可哀相という言葉から次第に悟りの境地に達する「あやめ」が好きだなぁ。
「化け物に取り憑かれ、自分は生きているとか、まだ辛うじて生きているとか、どうやらもう生きてはいないようだとか、しょうもないことの数々を言葉にならない言葉で自分に言い聞かせはじめたときから逃れがたく抱えこんでしまった、人類という種に固有のこの妙ちきりんで滑稽な悲傷。」
「どれだろうとそれがそうだと思ったときそれは木原にとって紛れもない現実となるのであり、もし複数の様々なことをそれらはみなそうだと同時に思うのならその思った数だけの紛れもない複数の現実があるわけだった。」
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