2005-11-17

この人の閾 / 保坂和志

この人の閾「なんかさあ、『夢のあとみたい』とか言っちゃうと、それで、何か言ったような気になっちゃうけどさあ。でも、本当はそういうのって、何も言ってないのと同じことじゃない」 (夢のあと)

とりとめもなく考えるひとたちが日常からちょっと離れてのんびりと日常をすごす小説集。

2005-11-12

もつれっぱなし / 井上夢人

もつれっぱなし「あなたがしなきゃいけないのは、この人が、宇宙人ではないという証明なのよ」

ぜんぶ会話だけで書かれているのでスイスイ読めた。
「○○の証明」といったタイトルのならぶ短編小説集で、本当かどうか疑わしい話にたいする戸惑いがおもしろい。

「本当のことって、なに?」

2005-11-10

脳男 / 首籐瓜於

脳男「しかし、その光景をたしかに見はしたものの、それを見ている者が自分自身だという認識はなかった。なぜなら視覚上の体験には主体的な身体活動がともなわないからだ。」

感情を持たない男をめぐる事件をめぐる小説。
ちょっと「羊たちの沈黙」に似ているが面白かった。

2005-11-07

日本世間噺大系 / 伊丹十三

日本世間噺大系「額などという、実用的に見れば何の役に立つとも知れぬ鈍感そうな場所に、こんな感覚が埋もれているとは!」

プレーンオムレツ作っちゃいました。
興味深い話が満載です。

2005-10-30

boys don't cry / 田口賢司

boys don’t cry(ボーイズ・ドント・クライ)「ねえ、たいしたことって何なのかしら?どんなことがたいしたことなの?私、ときどきこう思うの。"たいしたことなんて何もないんじゃないだろうか"って。だけどすぐにそんな考えを打ち消すわ。ねえ、人生を楽しくするより退屈にする方がずっとずっと簡単なのよ。嫌よ、私。人生は楽しい方がいいに決まってるわ。そりゃあ、なかには退屈な人生の方が楽しいっていうややこしい考え方の人もいるかもしれないけれど"人生を楽しむ"ってことでは共通してるわよね。」

「彼女は言う。「東の空から大っきなはげあたまが昇ってきたの」」

毎日いろんなことが起こっていて、そのひとつひとつに意味や重みをつけたりつけなかったり、つけなかったり、そしてまたいろんなことが起こる。いろんな始まりがあっていろんな終わりがある。終わったことばかりが記憶に残る。終わった?

「ひどくばかばかしいかんじがするよ。でも何がばかばかしいのかさっぱりわからない」

そんな感じ。

2005-10-24

メドゥサ、鏡をごらん / 井上夢人

メドゥサ、鏡をごらん「素材から、あなたがなにか小説を想像したとしたら、それはあなたの作品よ。」

もうゾクゾクしっぱなしですわ。

ところで、頻繁に登場する特急あずさには何度も乗ってるんですが、ここでふと思い出したことがひとつ、それは、電車って人の移動速度をはるかに超えてるよなぁ~ってことです。ま、余談ですが。。。

2005-10-22

熊の場所 / 舞城王太郎

熊の場所「恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない。」(熊の場所)

思わずウッと顔をしかめてしまいそうな文章もあるが、そこを乗り越えなくてはいけないのだ。紙の上の文章なんてただのユーモアあふれるサーヴィスなのだ。

「買った本はちゃんと読めっつうの馬鹿!」(ピコーン!)

2005-10-21

ニッポニアニッポン / 阿部和重

ニッポニアニッポン「この俺が、「人間の書いたシナリオ」を全部ぶち壊してやる」

でも、この小説自体が「人間が書いたシナリオ」なんだから・・・ぶち壊せ!

2005-10-17

ABC戦争 / 阿部和重

ABC戦争―plus 2 stories「公爵夫人邸の午後のパーティー」の奇妙な感じが面白い。

「問題は、ここで語られた――あるいはこれから語られるであろう――多くの事柄が、あたかも関係者の証言にそった事実であるかのように述べられているが、じっさいは語り手による部分的なつけたしによってでっちあげられたいかがわしい挿話なのであるということだ。なぜそのようなことになってしまうのか。」(ABC戦争)

2005-10-01

ダブ(エ)ストン街道 / 浅暮三文

ダブ(エ)ストン街道「それはまるでガンモドキの中にいるようなものだった。そして私たちはガンモドキの中にある銀杏二粒。銀杏が移動しているつもりでも、実は動いているのはガンモドキの方。そんな感覚が襲ってくる。」

変わった登場人物がいろいろ出てくるのが楽しい。
軽くてサクサクと読めた。

「確かにここでは歩き続けること、迷い続けることが次への扉になるのは確かだ。探し出すべきなにかは一ヶ所にじっとしていても見つからない。何度も同じところをいったりきたりしながら、幸運と偶然を自分の手でつかむしかない。」