2005-09-30

パラノイアストリート 1~3 / 駕籠真太郎

パラノイアストリート 1 (1)いろんな常軌を逸した町が登場する漫画。
著者お得意のグロ表現があるが全体的に楽しく読める内容ではある。
特に1巻で登場する小夜ちゃんは悪ふざけ爆発である。(ぼくは好きだけど)
あと最終話が面白かった。久々に思わず唸るような結末。

臨場感のない醒めた視点で淡々と展開していく作風にあったなかなか良い作品でした。

2005-09-19

インディヴィジュアル・プロジェクション / 阿部和重

インディヴィジュアル・プロジェクション「ぼくらはできる限り詳細に事態の推移を補足し、それを簡潔に物語ってみせなくてはならなかった。」

2005-09-12

日本の実話 / 河井克夫

日本の実話性欲にまつわる漫画短編集。
怨念やら情念やら出来心やら偶然やらが入り混じっていて不思議な感じ。
モノローグの視点がいやに醒めているのがなんともいえないリアリティがある。
これは面白かった。

2005-08-25

文芸漫談 笑うブンガク入門 / いとうせいこう×奥泉光+渡部直己

文芸漫談―笑うブンガク入門いとうせいこうのツッコミもなかなかいいが、奥泉光の余裕のボケがおもしろい。
言うことはちゃんと言ってるし。

2005-08-22

ツンドラ・パンチ! / 中川いさみ

ツンドラパンチ全体的にいまひとつという感じはするが、ちょっと変わった空気の流し方や突発的に出る投げやりっぽいギャグがいい。
個人的には「絶滅しちゃおーかな~」と言って脅迫する特別天然記念物のダルマウサギと、プレゼントが足りないので自分の耳を切り落として痛がるサンタが好きだ。

2005-08-19

無情の世界 / 阿部和重

無情の世界「だって、僕と何らかの関係ができてしまってからでは、彼女はいわば僕用の態度をとりはじめてしまうからね。そこで彼女は自分の行動を制限してしまうはずなんだ。」(トライアングルズ)

文章は淡々と書かれているが、その書かれている内容がどうも普通じゃない。普通じゃない内容も面白いのだが、それを淡々と書いてあるところが思わずぷっ!と吹き出してしまいそうになる。もしかしてこの人は堂々とデタラメ言っているのではないかと疑ってしまうのだ。とはいえ、もともとこの世界のいろんなものはそういうものなのかもしれないが。

2005-08-14

もののたはむれ / 松浦寿輝

もののたはむれ「あなたの目の、ちょうど裏側のあたりから、頭蓋骨の真ん中まで並んでいる骨があるの。蝶々の形をしているから胡蝶骨っていうの。六個あるのよ。真っ暗な中に蝶々が六羽並んでいるの。お琴の弦をかき鳴らすようにそれを撫でると、こんな音が出るの」

これはもう、読まないと損である。
と、書いておいて何が損なのだかよく分からないが、こんなに豊かな感じの短篇集があったとは、久々の発見である。なんども読み返したくなる文章は、時に、ぞおっと鳥肌が立つほど美しい。

「そう言えば、今まで考えてみたこともなかったが何年か前に初めて会ったとき以来、どうしたわけかこの子はちっとも大きくならないようなのだ。
「本当・・・。本当はね・・・」。隆司君はそこで言葉を切って、少しの間ためらった。その先を聞きたくないという気持が不意に榎田の中で動いたがそのときにはもう少年の血の気のない唇が動いていて、小さな、だがきっぱりした声が彼の耳に届いていた。「本当は僕はいないんだよ」
 何を馬鹿な、といったことを言いかけて言葉を探しながら榎田は隆司君の哀しそうな目を見つめていたが、少し間を置いてから少年が「おじさんもでしょう」と言ったときそれこそ背筋にぞおっと鳥肌が立ったのは今度は榎田の番だった。」

2005-08-10

風のくわるてつと / 松本隆

風のくわるてつと古本屋で見つけたので買ってしまった。
新潮文庫版は買ってあったはずだが・・・

詩もいいけど、短編小説らしきものがけっこう好きなんだよねぇ。

「ねえ聞いてよ ぼくはすてきなことをおもいついたんだ 時間とすいちょくにきみをわぎりにするのさ そうすりゃきみは動かない いちまいの絵になるのさ なにしろぼくのひとみはがくぶちなんだから すてきだろう」(風化粧)

「言おうと思っていることは、言葉になると同時に空中に飛び散ってしまい、不気味な形の汚点が翼を広げている天井のあたりで、とりとめもなくためらっているだけだった。」

「――あなたは本当に子供のようよ、隠れん坊していて忘れられた子供みたい、鬼はいったい誰なの?」

独特の語り口がたまらない。

2005-08-07

阿修羅ガール / 舞城王太郎

阿修羅ガール「私は私の内側のどこかにある、それもはじっこじゃなくて中心にある、暗い森の中で、私の中にあるたくさんの私を吸い込んでバラバラにして私の中に取り込んで、どんどん大きくなっていく。そうだ。私は怪物だ。」

まずいちばん特徴的なのは女子高生の口語体なのですが、まぁそれは特に珍しいことでもなくて、第3部で変調してるところがちょっと気になった。文体変わってるのはいいとして、だって、いきなりガクーンって説明っぽくなってるんだもん。

まぁでも面白かった。

2005-08-05

実験小説 ぬ / 浅暮三文

実験小説 ぬ「考えてみれば本の世界、本の中の物語は開いたページにしか存在しない。読者にとって閉じられたページはないのと等しい。それと同様の理由で今、私が感じられるのは私がいるページの世界だけだとしたら。
残りのページは閉じられているのと同じく、世界として成立していないとしたら――。」 (カヴス・カヴス)


実験小説とは何を実験するのか?小説を実験するのである。小説を小説が実験するだって?小説はそう思った。
小説が小説に小説を小説して小説らしく小説として小説は小説であるまえに小説だった。

「カヴス・カヴス」「小さな三つの言葉」「タイム・サービス」「箴言」などが私好み、他もまぁまぁ面白い。